時間と手間が引き出した
感動を届けるために。
銀座嘉禅 総料理長
簗田 圭 様
お店のカウンターの向こうには、堂々たるふかひれが並び、
その手前には深い趣きが描かれた器が
セッティングされている「銀座嘉禅」。
総料理長 簗田さんは、
広東料理の軸を大切にしながらも先鋭的で繊細な一皿を生み出し、
食通の舌を唸らせます。
夢を追うというよりは、
導かれるように歩んでいる料理の道について、伺いました。
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卒業後、そのまま北京へ。
辻調理技術研究所中国料理科を卒業したのち、父親の伝手で、特一級調理師に師事するために北京に渡りました。1998年ですから、北京オリンピックの10年前です。特一級調理師というのは、本当にそんなに多くない存在なので、ぜひ、その技術を学びたいと思いました。その時学んだのが広東料理でした。
嘉禅を始めたのは、店を出さないかとお声がけいただいたのがきっかけで、それまでは独立もそんなに考えてはいなかったんですよ。でも、始めてみてわかったのは、自分でやるのが性に合っているんだなということでした。
銀座を選んだのは、店をどこに出そうか考えた時、いろいろ調べたのですが、銀座はおもてなしされて一番うれしいエリアだという調査結果がありました。そういうもてなしの場としての役割を持てたらいいなと思い、銀座を選びました。実際、嘉禅は、接待などで使っていただくことも多くあります。 -
広東料理の軸は、
素材を生かした調理法。広東料理は、どちらかというと素材をシンプルに味わう料理で、和食に近い部分があります。嘉禅の一番出汁は、金華ハムでじっくりとります。これをベースに味を組み立てています。看板商品でもあるふかひれもそうですが、人に感動を与えるおいしさというのは、そこに行きつくまでに、物理的な時間と手間がかかります。一見シンプルに見えても、辿ってきた道には、さまざまな人の手が加えられているんですよね。嘉禅は、カウンターがあるのですが、そこでのお客様の反応をみて、その「辿ってきた道」が伝わりやすい提供の仕方のヒントをいただくことがよくあります。
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鮮度に対価を。
この価値が
料理を底上げしてくれる。高善さんの野菜のいいところは、なんといっても鮮度。他ではなかなか無い。リクエストに応じて、受注生産みたいなかたちで野菜を手配してくれます。そこは、お金に換えられないです。というのも、嘉禅の料理は、野菜で食感のアクセントと彩りをつくるので、鮮度が高いみずみずしい野菜は必要不可欠なんです。先程お伝えした「感動を与えるおいしさ」をつくるのにも野菜は必要です。黄にらや台湾豆苗が、ふかひれや干しアワビの価値をさらにあげてくれます。
また、広東料理は、果物も良く使います。南の地域の料理なので、マンゴーやパパイヤ、ライチなんかも相性がいいです。ザクロの酢豚、パパイヤのスープとかね、おいしいですよ。
カウンターで直接お客様に料理を提供し、反応をみれるのが、次につながっていきます。そのお客様の次はもちろんですが、料理やサービス全般の次にもつながります。
素材の辿ってきた道、嘉禅の料理が感動を呼ぶために辿った道を伝えることができたら、うれしいですね。
銀座嘉禅 総料理長
簗田 圭
1978年岩手県盛岡市生まれ。辻調理技術研究所中国料理科卒業。単身北京へ渡り特一級調理師に師事。中国飯店グループ、マンダリンオリエンタルホテルグループ、シンガポール マリーナ・ベイ・サンズ、都内レストランの総料理長を経て、39歳で「新広東菜 嘉禅」の総料理長に就任。
https://ginza-kazen.com/