果実のポテンシャルを
アイデアと融合。
ワインバーとアシェットデセール
EMMÉ(エンメ)オーナーパティシエ
延命寺 美也 様
今回お話を伺った「EMMÉ」は、独創的で、繊細な美しさの
アシェットデセールが唯一無二の存在。
その唯一無二を作り出すオーナーパティシエの延命寺さんは、
ミシュラン一つ星「ラチュレ」でシェフパティシエを務めた実力派。
フルーツの持つその華やかな香りをさまざまなアイデアで届けます。
ルーツとなる食体験や、素材に対する思いについて、伺いました。
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母の影響で、製菓の道へ。
幼いころ、母はよくお菓子を作ってくれていて、やっぱりその影響は大きいです。自然と自分でも作るようになり、学生の頃はよく作って、友達にあげてました。すごいねと褒めてくれるのがうれしくて、それがモチベーションでしたね。
そして、もうひとつ、私の食体験で特徴的なのは、父が狩猟をやっていて、日常的にジビエ料理を口にしていたことですね。狩猟で捕った獲物が父に捌かれ、私たちの食卓に上がるということが日常でしたから、「命をいただく」という意識は常にありました。自然と今でいう食育がなされていたように思います。そして進路を決めるとき、みんなが当たり前のように選ぶ大学進学が、どうしてもピンと来なくて、そこで初めて将来について考えました。その時、製菓をフランスで学びたいと考えるようになりました。 -
温度を武器にして
一皿を描く
アシェットデセール。専門学校で1年学び、その後1年フランスで製菓を学び、帰国後は2店舗ほど洋菓子店に勤め、基礎を学びました。その後はずっとレストランでデセールですね。ケーキを作るのも大好きなのですが、レストランはその場で召し上がっていただくものを作るので、お客様の声が届きやすいというところが私は好きなんです。あと、温度ですね、温度を武器にして構成を作れるというのが、いいですね。あと、ロスが少ないのもいいところです。
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最も意識するのは香り。
その果実のポテンシャルを
引き出したい。アシェットデセールやパフェを作るのに必要な果物や、野菜、ハーブは、様々な形で仕入れています。契約農家さんから取り寄せるものももちろんありますが、人気のあるメニューをもう少し走らせたいと思っても、もうその土地の旬が終わっていることも。そんな時、高善さんだと、旬のいい状態のものを用意してくださいます。最近やっぱり気候変動のせいなのか、旬や味が変わってきているので、いろいろ難しいです。
ただ、基本的に日本の果物はフレッシュが一番おいしいです。でも、私が心がけているのは、農家さんがおいしく育てたその果実をもっとおいしく伝えるということです。そこを表現するには、やっぱり香りだと思っているんです。よりその香りを伝えるために工夫を凝らします。その果実を連想させる色を表現するようにしていますし、皮をシャーベットにして香りを膨らませたり、違う果物を使って、相乗効果を得られるようにしています。果実のポテンシャルと私のアイデアを組み合わせて提供していくことができたらと日々意識しています。
ワインバーとアシェットデセール
EMMÉ オーナーパティシエ
延命寺 美也
料理好きの母の影響から、料理の世界に憧れを持ち辻製菓専門学校で製菓を学び、同フランス校へ。帰国後都内のパティスリー、レストランを経て、ミシュラン一つ星「ラチュレ」でシェフパティシエに。2019年ソムリエの夫、延命寺信一と共に「EMMÉ エンメ」をオープン。2023年レストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」でベストパティシエ賞を受賞。
https://emme-wine.com/